技能グランプリで見事第一位に輝く
中井さんは洋裁学校を経営する家庭に生まれ、幼い頃より衣服に慣れ親しんできました。
「子供のころから両親は服を作る時、スタイル画の中から好きなデザイン・生地を選ばせてくれましたから、自然に服飾の感覚を学びました。自分の服を作ることも教わりましたので、中学生の頃には制服は自分で作れるようになりました。」
当時最先端の優れた被服技術が学べる東京にある短期大学に進学し、有名なデザイナーから技術や知識などを学びました。
「『良いものを見たい、良いものに触れたい、作りたい』という気持ちが人一倍強かったです。短大在学中は、良い指導者・友人に巡り合い、環境にも恵まれ、ファッションショーのお手伝いをさせていただくなど、幅広く高度な技術を学ぶことができました。こうして学んだことを皆さんに伝えていければと考え、地元に帰りました。」
地元八幡浜の淑媛ドレスメーカー専門学校では生徒を指導する傍ら、第3回技能グランプリでは初出場にして見事第一位、22種目の優勝者の中で4人にしか与えられない内閣総理大臣表彰を受賞されました。
「出場する限りは、やはり優勝したいと思っていました。競技に向け朝と晩や仕事の合間を見つけて課題製図を200枚以上図面を引くなど、努力は惜しみませんでしたし、また母や妹を中心に協力してもらいました。そのおかげで非常に落ち着いて競技に臨め、時間配分も計画通りに進み、納得のできるものをつくることができました。優勝することができて本当に嬉しかったです。一生の思い出です。」
(写真:技能グランプリ作品「一番苦労したのはペプラム(スーツのウエストから下の部分)のフレアを綺麗に出すことでした。」)
ものづくりの大切さと技能継承
永年淑媛ドレスメーカー専門学校や四国ソーイング高等職業訓練校で指導されてこられ、また、技能士資格取得を奨励し、数多くの技能士を誕生させるなど、技能継承に熱心に取り組んでいます。指導するときはどのようなことが大切でしょうか。
「企業においては、新入社員からベテランの社員まで縫製技術や素材選び、繊維の知識・色彩学などニーズに合わせつつ、技能・技術を指導しました。まず基本をしっかり身につけ、その人のレベルに応じた指導も心がけ、能率良く、無駄のない仕事を考えることが大切であることをいつも話していました。」 過去には、技能五輪全国大会の出場選手を育成し、入賞に導くなど技能レベルの向上に尽力し、近年は今治高等技術専門校の服飾ソーイング科でも講師を務め、また現在婦人子供服製造の技能検定委員を務めています。若者がものづくりから離れていることが言われていますが、ものづくりの魅力を教えてください。
「何でもそうですが、何もないところから形を作る仕事が重要なのです。例えば、洋服をつくることは、一枚の生地から形を作り上げるという完成した時の達成感や、それを自分が着る、人が着るというそれぞれの喜び、発見があり、更にレベルアップしたという実感もあります。そしていまの社会「ものづくり」という言葉を耳にしない日はありません。大企業で、小さな町工場で「ものづくり」の技術を継承しています。時間もかかり、奥も深いので苦労することもあるでしょうが、逆にその分、得られる喜びはとても大きいのです。それが魅力かもしれません。」
(写真上中:技能検定委員を務める中井さん、写真下:愛媛マイスター認定証授与式)
若手技能者、若者へのメッセージ
若手技能者、若者へのメッセージをお願いします。
「習い事をしたいと思ったり、ものづくりを体験する機会があれば、是非チャレンジしてほしいです。私も小さい頃から絵やお花、お茶を習うことで、色彩感覚などが磨かれ、服飾以外にも本当に役立っています。また、美術館で絵画を観たり、映画やコンサートを楽しんだり、専門分野以外の方とお話をすることで刺激を受け、更なる成長に繋がっていくと思います。」
平成21年度に愛媛マイスターとして認定されました。どのようなことを伝えていきたいですか。
「難しいことを一切抜きにして、ものづくりが本当に楽しいと思えるきっかけづくりをしていきたいと思います。技術・技能は利用され、受け継がれるものです。是非何かを作ってみてください。それが自分の特技になっていき、ものづくりの楽しさを実感できます。
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