自然の素材を活かし、美味しくて安全なパンを
佐田さんは、松山市で創業38年になるウエスタンのパン職人としてパンづくりを追求しています。大学卒業後、松山市のパン屋で修行を積みました。
「私が学生の頃は、まだ家庭の食卓にパンというものが一般的ではなく、今後パンを広めることができれば面白いんじゃないかと思い、学生の頃から縁のあったパン屋で修行しました。そこで仕事しながら職人に技術を学び、また色んなパン屋を見て回ったり本を読んだりして、技を磨きました。」
26歳の時に独立し、松山市三番町にウエスタンを開店、現在は移転し松山市和泉にお店を構えています。
「修業時代は、将来自分の店を持つという夢を持っていましたので、辛いとか思ったことはなかったです。昨年、お店を移転しましたが、おかげさまで近所のお客様から三番町のお店の時からのお客さんまで、沢山の方に来店していただいています。」
ドイツから輸入した本格的な石窯や自ら厳選した体に優しい素材を使うなど、パンづくりにこだわりを持ち続けています。
「石窯で焼くとパンの外側はパリッと固く、中はふんわり柔らかくなります。また、愛媛県産小麦粉を100%使い、天然塩、今治市玉川の湧き水など自然の素材もふんだんに使い、お客様に喜んでいただけるように、美味しく安全なパンづくりを追求しています。」
また、ドイツの職人を招くなど、パンづくりの研究に余念がありません。
「ドイツ人の食べ物の考え方は、日本人とは根本的に違います。単純に美味しさや見た目を追求するのではなく、例えば、胃を浄化するためのパン、エネルギーを得るためのパンなど、人の健康を基本にしたパンづくりをしています。こういう考え方もあるんだと、衝撃を受けました。それ以来、私も人の体により優しいパンづくりを念頭に取り組んでいます。」
(写真:ウエスタン−平成21年より松山市三番町から松山市和泉へと移転しました。)
ものづくりのこだわりと技能継承の取り組み
ものづくりのこだわりを教えてください。
「お客様に納得して食べていただいて美味しいと言っていただけるように、私たち職人が素材からこだわり、またお客様の意見を積極的に聞くことが大切ではないでしょうか。本物を提供したいとの思いです。ただ、ものづくりは時間や売り上げなどに追われていると、なかなか良いものをつくるのは難しいかも知れませので、現在大変厳しい世の中ですが、少しでも心に余裕を持つことが求められるかもしれません。また、日本人は仕事を頑張りすぎる傾向にあります。どうか、体も大切にしてほしいですね。」
ものづくりの大切さを伝えるためにはどうすればよいと思いますか。
「私たちの子供時代に比べて、少し子供達を大切にしすぎてるかなと思います。それは、例えば鉛筆を削るときや料理のお手伝いなどで、ナイフや包丁は危ないからできるだけ使わせないご家庭は多いですよね。子供を大切にしたいお気持ちは分かりますが、なぜ危ないか体験してみないことには、理解できません。ですので、是非子供が興味を持ったことには、チャレンジさせてあげてほしいです。また、パン教室で色々なお子様と触れ合っていく中で、手先が器用な子はものづくりに向いているなとか、本を読むのが好きな子は研究職向きだなといった個性がわかります。ご両親や学校がそれぞれの小さいときからお子様の個性に合わせた教育をしていくことがいいと思います。
また、日本はものづくりで成長してきた国ですからも、もっとものづくりを頑張らないといけませんね。今後も愛媛マイスター等の活動を通じて、ものづくりの大切さを伝えるお手伝いをできればと思っています。」
技能検定委員を平成4年から現在に至るまで務めています。また、これまで将来独立を目標とした若い人材を職人として雇い入れたり、関西有名パン専門店へ派遣修行を行うなど、後進の指導、育成に熱心に取り組んでいます。
「若手技能者の方には特に基本を大切にしてほしいです。普段勤務されている中で、もし基本を学ぶことが少ないのでしたら、どこかで努力してほしいですね。若手の方とお会いする時にも基本的なことをアドバイスさせていただいています。基本をしっかり学び身につけることは、将来きっと役に立つはずです。」
(写真上:現代の名工−久保賀運氏との連携商品「鯱鉾パン」、写真中:ウエスタン厨房にて、写真下:技能検定委員を務める佐田さん)
若手技能者、学生さんにメッセージ
若手技能者、学生さんにメッセージをお願いします。
「パンの業界も競争が激しくなっているのが現状ですが、その中でもしっかりとした目標を持ってほしいです。もし、独立を考えているのでしたら、もの凄く大きなお店でなくても、できるだけ長く続けられ、多くのお客様に愛されるパン屋さんをできればいいですね。そして、時間や仕事に追われるのではなく、心にゆとりを持ってものづくりに励んでほしいと思います。」
佐田さんのご長男の敏さんは、佐田さんのもとで修行後、神戸の有名パン専門店に勤めており、そこでパンの神様と呼ばれるフランス人パン職人フィリップ・ビゴ氏のもとで修行中です。今後について「息子が帰ってくるまでは、頑張りますよ。息子に任せることができれば、感無量です。」と笑顔でおっしゃられていました。
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