花の輪、人の輪
『花の輪、人の輪』をコンセプトに、初心者の方から県内各地フラワーデザインスクールで先生をされている方や技能士、花屋さんに勤める方など幅広く指導されています。
「いま教室には50名ぐらいの生徒がいます。遠く宇和島、伊予三島、新居浜から来ている人もいますよ。長い方では20年ぐらい教えている生徒さんもいます。スクールに来るのに疲れた生徒さんが、帰りには嬉しくて満足げな様子に変化してくれるような癒しの部分も提供したいです。」
生徒さんに教えるためには業界の状況やトレンドについての情報収集も欠かせません。
「例えばファッション業界にしても次々と新しい流行が生まれていく中、消費者の好みが変わっていくようにフラワーアレンジメント業界でも、トレンドがあります。常にアンテナを高くして情報をキャッチしています。これまでの経験などから事前に流行がわかるようになりました。今の流行も敏感に捉えつつ、3年先ぐらい先を読んでいます。」
人との繋がり、縁というものを大切にしながら、フラワーデザインスクールや県内中学高校等での講演を通じて日々熱心に指導、人材育成に励んでおられます。
「技術を教えることはもちろんですが、人の輪をつくろうとスクールを開校したときから取り組んできました。お花を通じた交流とともに、人間関係を築いています。出来るだけ色々な業界の方と接点を持つことも重要で、花の世界以外にも目を向けています。人を育てることを基本にし、社会に貢献することを念頭においています。」
技術を身につけ、伝えていく 幼い頃お母様から、技術を身につけることの大切さを教えてもらったそうです。
「母からは『自分が身につけた技術は取られることはない。』とよく言われて、その大切さは幼い頃からなんとなくわかっていました。お花が好きで生け花も習っていましたので、自然とお花の道へ進みました。」
学校で園芸、フラワーアレンジメントを学ばれました。その当時日本にフラワーデザインが入り盛り上がっている最中で欧米から先生方も沢山来られ、最先端のフラワーアレンジメントの技術を学ぶ機会に恵まれたそうです。
「当時の最先端の技術を持った欧米の先生方から学びました。その先生の持つキャラクターや技術などは、その国で育った環境が土壌となっています。だから私はその先生方の国に行って、展示会を見たり、フラワーアレンジメントで使用するお花などの材料を実際に手にしてフラワーアレンジメントをしたり、町並みや風景なども体験したりしました。実際にその国へ行って色々なことを体験してみないと、その先生方の持つ真の技術は学べません。」
卒業後、大阪の花屋さんに就職し業務を通じてフラワーアレンジメント技術を学び、昭和43年からフラワーデザインスクール講師としてご活躍されます。その後、愛媛県では初のフラワーデザインスクールを設立し、今日まで長年数多くの生徒さんを指導、育成してこられております。
「両親が教師をしておりましたし、兄弟もほとんどが何かの先生をしています。そういった環境もあったのか、教えることを始めてはや45年、こうやって続けてこられた今を思えば、自分に教えることの適性があったのかなと思います。教えることを止めて別のことをしようとしたことは一度もありません。」
教えることは闘い
平成元年、フラワー装飾職種の技能グランプリに愛媛県の選手として初めて参加し、見事金賞(第1位)に輝きました。
「当時愛媛県では誰も出場したことはありませんでした。指導する立場として、まず自分が経験しそれを生徒さんに伝えていきたいと考え、技能グランプリに出場しました。技術的なことは勿論ですが、花屋での現場経験と、フラワーアレンジメントを教えた経験の両方を活かして競技に臨み、金賞をいただきました。」
※右写真:平成21年度職業能力開発促進大会出展作品 生徒さんにはレベルの高い技術を持っている方々も多く、指導する立場として要求されるレベルも日々高くなっていきます。
「道を切り開いていくパイオニアは、人には受け入れられていないことをしてこそではないでしょうか。人と同じことをしていても誰もついてきません。生徒さんも高い技術を身につけながら追いかけてきますから、それ以上のことを持って教えなければ生徒さんは満足しません。私の中では闘いですよ。教えることは楽しいことも多いですが苦しいことも多いです。お金をいただいて教えている以上はその責任がありますし、教えたことに対して満足していただけたかなと自分にいつも問いかけています。それがわかる一つの方法が、展示会等で受賞することだと考えています。その人の持つ個性をうまく引き出しながら、私が体験し、取り入れたことをかみ砕いて教えています。」
国内外問わず各地で開催される展示会、セミナー等にも参加し、技能の研鑽、業界の研究に努めています。
「最近も名古屋でセミナーに参加しましたし、毎年数回海外にも足を運びます。近年はアジアの勢い
が良く、世界のトレンドがアジアになっています。やはり、自分が体験するということは大事です。そして技術はここまでやればパーフェクト、これで終りというものはありません。一生勉強です。」
垣本さんの趣味の一つは絵を描くことです。絵を描くことの色遣いがフラワーアレンジメントにも通ずるそうです。
「絵を描くことも好きですよ。上手ではありませんが、一つの癒しですね。目から入る色というのは非常に大切です。」
現在教えていくことと共に、「花の芸術活動」にも取り組んでおられます。
「お花による芸術活動を追求しています。フラワーデザイン教室や展示会等を通じて、お花をアレンジメントして飾ることで何か感じてもらったり、人の心に安らぎを与えられるようにとの思いで活動しています。これからも芸術活動を追求していきたいですね。」
若手技能者、学生さんへのメッセージ
若手技能者、これから業界を目指す学生さんへのメッセージをいただきました。
「お花に限らず、最近はお稽古ごとをする人は減っています。将来に向けて投資をするのは大切なことです。そして、何か一芸に秀でているということはいいことですよ。これだけは自分で努力したという一生に残るような経験をすることによって自信が生まれてきます。しかし、ある程度できるようになったからといって自信過剰にならずに、常に上を見てレベルアップを考えてください。そんな中で継続することが大変になってくると思いますが、どこかを犠牲にたり我慢したりすることや、本当にやっていこうと思えば道は開かれます。その時は気付きませんが、将来必ず大きな喜びが得られるはずです。私も一心不乱にやってきたから現在があると考えています。努力を積み重ねると共に、自分に厳しく、人には優しくあってほしいです。」 |