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高松 忠利 氏 タカマツ タダトシ
高松 忠利 氏

紳士服仕立職


[Profile]
昭和13年12月6日生まれ

テーラータカマツ
住所 松山市東長戸3丁目9-32
電話 089-925-4932
http://ameblo.jp/tailortakamatsu/


 京都での修業を経て、昭和30年スズラン洋服店(松山)に入店。その後、デザインの勉強のため日本洋服技能学校(東京都)に入学。昭和35年に卒業し、地元松山の洋服店に勤務後、昭和40年にテーラータカマツを独立開業し、今に至る。

昭和58年 第25回全日本紳士服技術コンクール 大阪市議会賞受賞
平成元年 一級技能士資格取得(紳士服仕立)
平成6年  第13回技能グランプリ初出場以降、5年連続高位入賞
平成13年 第20回技能グランプリ金賞(第1位) 厚生労働大臣賞を獲得
平成14年 愛媛マイスター認定
平成19年 現代の名工(卓越した技能者)厚生労働大臣表彰
平成21年 第24回熊谷賞受賞


  現在、仕立業の傍ら、修業のために通っている若手(女性)に仕立技術を指導するとともに、愛媛県立今治高等技術専門学校装飾ソーイング講師、大阪洋服技能士会夏季技術講習会の講師、審査員を務めるなど、熱心に技能継承に力を注いでいる。



技術は一気に身に付くものではありません

幼少のころ終戦直後で、戦争の傷跡が残り、ものが不足する時代で、我が国が一歩一歩復興へと歩んでいまいした。高松さんが紳士服仕立職を志したのは、京都の洋服店へ修業し始めたのがきっかけです。

「当時は何もわからない状態です。ただ、ここで仕事を習うんだ、技術を習っていこうという真剣な思いでした。非常に厳しかったですし、真面目に取り組みました。」

その後、地元松山での洋服店勤務の後、東京の日本洋服技能学校でデザインの勉強のために入学しました。

「あの頃は志す人も多く、同期生が120人位はおり、非常に活気が溢れて学校では熱心に学びました。授業の後、すぐに家に帰り習ったことを昼夜を問わず、何度も何度も復習し、頭に入れていました。」

卒業後地元松山に帰り、洋服店に勤務されました。

「洋服店での勤務では、基本的なことを学び、失敗をしながら勉強し、少しずつ技を磨きました。経験することにより、こうしたらよいとか、こうしてはいけないと自然にわかるようになりました。」

また当時は『例会』という技を披露し合ったり、情報交換をする会があったそうです。

「例会に積極的に参加し、先輩方から仕立技術を学びました。本当に地道にコツコツと。皆が技を持ち寄り色々な意見、知恵を出し合いました。本当になるほどなと思った技術を取り入れました。技術は知らない間に身についているものです。」

そしてついに昭和40年、テーラータカマツを開業されました。

「思えばこの業界に足を踏み入れ独立開業するまでに、12年の歳月を要しました。」


お客様に満足していただける紳士服を仕立てる

高松さんは、お客様の体型に合い、動きにフィットする着心地の良い紳士服にこだわりを持っています。体型に合わせつつも、美しいシルエットの紳士服が生み出されます。

「『商』というよりも『技術』に重きをおいてやってきました。いわゆる技術屋と呼ばれる人達は、『商』の部分は苦手でないでしょうか。当たり前ですが、一切の手抜きはしません。お客様に満足していただける紳士服を仕立てるという思いだけです。」

あるお客様に仕立てた紳士服には、30年以上愛着を持って着ていただいているものもあります。

「オーダー紳士服でしたら、長年着ることができます。そして、ずっと着ていただくと段々と馴染み、着心地が良くなり、崩れません。また、紳士服を仕立てるには、目も養わないといけません。生地の素材選びにもそうですし、いまや服を着ている人でも、体型や骨格がパッと見ただけでわかります。こういったことも当たり前のことです。」


技能グランプリで広がる交流

平成元年紳士服仕立職一級技能士資格取得後、合計6回技能グランプリに参加し、平成13年第20回技能グランプリにおいて、念願の金賞(第一位)を獲得され、更に平成14年に愛媛マイスター、平成19年に現代の名工に認定されました。

「私は人の前に出るような人間ではありませんが、参加を勧めていただきました。おかげさまで第20回技能グランプリにおいて、念願の金賞をいだきました。こういったこともあって、愛媛マイスターや現代の名工に認定していただいたと思います。非常に有り難いことです。」

競技を競うことと同じぐらい、そこで出会った仲間との交流が実に楽しかったと語ります。

「同じことを学んだ人達と技能を競うことよりも、交流が生まれたことの方が嬉しいですね。やはり、同じことを学んだ者同士なので、何時間も何時間も語り合いました。いまでもその方々と交流があります。これからも出会いを大切にしたいです。」


技能を継承したい

ものづくりにおいて、どの業界も技能継承問題がクローズアップされる中、紳士服仕立職の世界でも後継者や志す人が少なくなっているのが現状です。高松さんも、技能を継承する人が段々と少なくなってきていることを危惧されている一人です。

「後継者がいなくなってしまうということは、学んできたことが失われてしまうんですね。我々の時代とは違い、志す人が本当に少なくなっています。残念ながら、現状はそうなっています。」

そんな中、現在高松さんのもとには若手の後継者、土居静香さんがいます。初めて会った時のことをこう振り返ります。

「紳士服を学びたいという人が来てくれたことにも驚きましたが、意外にも若い女性の方が来たという点で大変驚きました。その時の表情は真剣そのもので、非常に真面目な人だという印象でした。一週間の熟考の末、受け入れることにしました。」

業界でもこういった形で弟子入りを志願し、技能を継承するというのは非常に珍しいケースです。


技能を受け継ぐ

高松さんのもとへ修行へ来ている土居静香さんにもお話を伺いました。

土居さんはもともと紳士服を学んできました。紳士服を学び縫えるようになりたいことや婦人服に取り入れたいということと、紳士服を学ぶ人が少なくなっていることを知ったことが高松さんのもとへ訪れるきっかけとなったそうです。

「以前は、紳士服仕立職という仕事を知りませんでした。知っている人は少ないのではないでしょうか。しかし、装飾の世界を志す人は多いので、是非紳士服の世界も知ってほしいですね。」

高松さんの「自分が楽しんでやることが、技能を身につけるコツ」というアドバイスのとおり、日々楽しく技能を習得しています。

「優しく非常に熱心に教えてもらっています。師匠からは、楽しんでやっていると技能が身に付きやすくいい服が出来てお客さんも何度も足を運んでくれると言っていただきました。紳士服を作っていて楽しいのは、一つ一つの細かな技を組み上げると、一つのものが出来上がるところや、その出来上がりを想像したりすることです。」

しかし、まだまだ学ぶことも多く、毎日が勉強の日々です。

「教えてもらったことをわかりやすくノートに記録し、師匠がされているところを見て覚えます。最初は同じ様にできますが、段々と自己流になってしまい、もう一度見て勉強しています。技を身につけるには、時間がかかり、自分のものにするには本当に難しいです。師匠の手の動きは素早く、無駄がありません。長年の技はさすがだなと思います。」

現在は採寸と製図に力を入れて学んでいるようです。

「いまは特に採寸と製図を勉強しています。そのために体型を判断することが重要になります。まだまだ完璧とは言えませんが、パッと見て体型がわかるようになりました。師匠のように瞬時に体型を把握できるようになりたいです。」


お客様の要望に応えるために

お客様とのやりとりもこの仕事の楽しみの一つです。

「お客様には、とことんこだわる方もいらっしゃいます。生地、糸、ボタン、襟の形、ポケットの深さなど注文していただければ色々とお客様の好みに合わせることができます。そういったご要望にできませんとは言いたくありません。お客様の好み、体型に合わせつつ、見た目も綺麗な紳士服をつくることを心がけています。」

仕立てた紳士服をお客様に納品するときは、期待半分だそうです。

「自分ではきっちりできたつもりでも、お客様はどうだろうという気持ちになります。細かい作業が集まって全体になるので、一つ一つの作業を今できるベストを尽くしながら仕立てます。実際着ていただいているところを見ると、私が仕立てたんだと不思議な気持にもなります。作業をしているときは、難しいと思いながらしていますが、着ていただているところを見て安心しますし、嬉しいですね。」

あるお客様の要望に応え、喜んでいただいたことが印象に残っているそうです。

「通常と違った生地、糸で作ってほしいと言われたことがあります。そのご要望に応えるため自分なりに生地、糸を選び作り上げた結果、お客様に非常に喜んでいただいたきました。これからもお客様の要望に応えていき、また人と動物と地球にやさしい服作りをしていきたいです。」


若手技能者、学生さんへのメッセージ

高松さん

「今は非常に厳しい世の中ですが、この業界でやっていこうという人がいてその人たちが技を磨き、技能を継承しながら、いい紳士服を仕立て、お客様に喜んでいただくことで社会に受け入れてくれるようにと考えています。また、そういった技能というものは、ここまでやればいいというものではありません。これからもずっと勉強していきたいです。」

土居さん

「自分が好き、楽しいと感じられることを仕事にできるのは非常に有り難いことだと思います。この仕事はお客様の色々なこだわりを形にできますし、気に入って長く着てもらえることが最大の魅力です。少しでも紳士服仕立職に興味をもたれた方や装飾が好きな方は、どうかこの業界も目を向けてみてください。」


自然を楽しむ

高松さんの趣味は、石槌山、面河渓などで渓流釣りをしたり、風景眺めたり季節を感じたりして自然に触れることです。

「渓流釣りや風景を眺めるのが好きで、石槌山や、面河渓によく出かけます。自然の中にいると日常忘れることが出来て、とてもリラックスしていますよ。自然と共存してると実感しながら、楽しんでいます。」

  


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