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熟練技能者から若者達へ
 県内の熟練技能者とものづくり現場の紹介

熟練技能者の紹介  熟練技能者が活躍する現場とは
● 取材編 〜熟練技能者は熱く語る〜 ● ものづくり工場の紹介
● 紹介編 〜熟練技能者の紹介〜  


  

  機械組立仕上 〜機械組立・仕上〜

近藤 美喜男 氏 住友重機械テクノフォート株式会社

 住所 愛媛県新居浜市惣開町5番2号
 電話 0897-32-6326
 URL http://www.shi.co.jp/stf/
 

 
コンドウ ミキオ
近藤 美喜男 氏

製造部 技術グループ 主任技師


(昭和23年8月生)


取得資格
特級技能士資格(仕上げ職種)
特級技能士資格(機械検査職種)


プロフィール
近藤さんは、平成11年には高度熟練技能者、平成14年に愛媛マイスターとして認定されました。これは大型プレスの据付と組立てに特筆すべき技能を持ち、国内はもとより旧ソ連・ドイツ・韓国・インドネシア等海外への製品据付と試運転を行い、そのレベルの高さが評価されたものです。近年、複雑な自動化が要求され、生産量も増加するプレス機械にあって、その組立て手順を考え、安全を考慮し、高度な要求精度に応ずるべく、設計段階から関わり、客先のニーズを考慮するなど、高度な技術力を持っています。また永年、技能検定委員を務めたり、県内高校へ指導等、後進の育成にも大きく貢献されています。


大型プレスの据え付けと組立て

今回は大型プレス機械、産業機械製造事業を行っている住友重機械テクノフォート株式会社の技術者を代表して、近藤美喜男さんにお話を伺いました。近藤さんは中学校を卒業後、養成工として住友重機械工業株式会社に入社されました。

「入社2年間の養成工時代は高校と同様の13教科の座学と、旋盤加工と機械組立て仕上げの要素作業の実技教育でした。教育中における指導担当者や先輩方の励ましの言葉が、まだまだ少年だった私の気持ちを前向きにしてくれていたことをよく覚えています。その教育の中で、旋盤での加工でも物は変化していきますが、仕上げでは小さな機械部品を取り付け組立てていき、一つのユニットとなり、更にそれらを組合わせて一台の機械となります。それらをまたラインとして組合せて、大きな一つの設備となり稼動していくという迫力にとても魅力を感じ、機械組立て仕上げに配属を希望しました。」

機械組立て仕上げに配属され、自動車関係の板金プレスや鍛造プレス、製鉄機械の連続鋳造機、圧延設備等多品種の組立て作業に携わります。

「入社4年目にレベラーと呼ばれる機械の組立てを任され、部品の摺り合わせによる平行出しや部品の組立て、精度測定まで実施し、また当社第一号の鍛造プレス組立てと据付の出張を経験することで、自分の技術力を養う機会が多くありました。上司、先輩方は優秀な方ばかりで本当に恵まれた環境で育ったと思います。」

特に努力したことや勉強されたことについて教えてください。

「私自身も”早く一人前になりたい”とか、”あの先輩みたいになりたい”といった目標を持って取り組んでいました。3〜5年先の先輩に目標を置き、例えば目標とする先輩方が通信教育を受講すれば私も受け、技能検定や衛生管理者等の資格取得をすれば、私も必ずそれらを取得するよう心がけました。また、養成工時代から積み重ねた技術・技能を忠実に実行し、作業中には設計図面が一体何を求めているのか?を考えながら作業するよう心がけていました。そうして養った図面に対する読解力や普段の業務の中でトラブルが発生した時の判断を自分なりに考え、先輩・上司との考えと対比しながら、対応をしていく中で、自然と自信が身についたのだと思います。」

そして入社14年目ぐらいからは、旧ソ連やインドネシア、韓国等海外へも大型プレスの据え付け業務に携わります。

「会社の考えるオールマイティー育成教育の一環として仕上げから検査業務にローテーションとなりました。そのお陰で潤滑・油圧・空圧システムが理解できるようになり、ローテーションが終了する3年後には5,000トン級の鍛造プレスや製鉄機械の組立てから試運転までを行えるようになり、卒業試験としては旧ソ連での鍛造プレスラインの据付業務という課題を与えられました。ここでは据付から試運転、オペレーター教育・機械設備稼動保証試験まで4ヶ月半を費やし、無事に引き渡すことができました。3年間のローテーションでしたが、人間はやる気なればできるものだと実感しました。」

2年前に定年を迎えた今現在も、住友重機械テクノフォート株式会社で製造部・技術グループ・技師として、国内外を問わず業務にあたっています。また後進への指導、技能継承に熱心に取りまれています。

(写真:住友重機械テクノフォート株式会社 新居浜市惣開町 大型機械加工設備と高い技術力を持つ国内有数の工場です。写真上:東洋一のプラノミラー(幅5.5m高さ5m迄加工可)、写真中:縦型旋盤(直径9m高さ4.5m迄加工可)、写真下:縦 型棟 169t天井クレーンと300t相吊りビーム)


機械組立てのポイントと技能継承への取り組み

年々プレス機械が複雑な自動化が要求され、生産量も増加する機械になって行く中、また一つ一つの部品の重量は100トンを超えるものも多く、安全を最優先しながらもお客様のニーズを考慮し、効率的な組立て手順を考案し、また、高度な要求精度に対応するために、設計段階から関わってこられました。その結果、国内はもとより海外でも数多くのフォージングプレス製鉄機の組立て、試運転、現地据付試運転から引き渡しまでを担当され、また新しいアイデアや改善策を実践し、製品の生産数を倍増させ、またその品質の向上にも成功されたこともあります。

「最初の頃、出張で据付業務を行うとき、もっとも強く感じたことは、『早く30歳くらいになりたい!』ということです。その理由は『作業者を上手く指導して、こちらの意図するように動いてもらえるようになりたい。』からです。当時の私は22、23歳でまだまだ若造でしたから、百戦錬磨の作業者の前ではなかなか認めてもらえなかったものです。その中で、作業者とうまくやり取りすることも多く学びました。そして、製作工場内では体験できない、生きた教えを数多く吸収できるのが出張業務だと思います。その現場の長として現場を預かる時は、自社の技術者と、協力業者の技術者を上手く動かして、業務を成し遂げなければなりません。自分一人の力はたかがしれています。品質と安全面を最優先し、土木や電気のハード、ソフト、油圧制御の技術力や知識、経験が欠かせませんし、その作業計画や工程管理の能力も必要です。必要な技術、管理的能力を全て含んだ、総合力が要求されます。」

大型のプレス機械の据付を成功させるには、大きなプレッシャーがあったのではないでしょうか。

「会社の看板を背負って現場へ行きますし、その機械や金額規模も大きいですからプレッシャーを感じることもあります。そのプレッシャーを克服するのには、優秀な先輩方はそういった仕事を成し遂げているんだとか、私も早くそうなりたいとなどと考えたり、またこれまで努力もしてきたという自信もあり、常に前向きに取り組んでました。上司、先輩からも励ましていただいたり、檄をいただいたり、仕事をする上で良い先輩を見つけ、自分一人で悩むことなく、相談もしていましたね。」

住友重機械テクノフォート株式会社では、近藤さんを代表とする優れた技術者の方の技術を継承することに取り組んでいます。

「我々団塊世代の人間が次々と退職をする時代となり、技能継承に待ったはありません。危機感を持って取り組んでいます。当社では、技能継承への取り組みとして現状調査をして誰がどんな技術・技能を持っているかを把握する技能マップを作成し、それをもとにしてローテーションすることに取り組んでいます。毎年、技術者と責任者が技能マップを見直し、その進捗状況を把握しています。具体的に言うと、機械一台ごとにそのオペレーターの跡継ぎは誰で、そのためには誰をどのぐらいの期間を持って育成するのかといった内容でです。ただ、単純に技能・技術と言っても細かなところまで色々あり、まだまだやるべきことはたくさんあります。今後も全力で取り組みます。」

これまで社内技術者の人材育成にも大きく携わり、また技能グランプリや技能五輪出場選手に指導をするなど持ち前の指導力を発揮し、後進の育成にも尽力されてこられました。また、昭和61年から技能検定委員を務め、多くの技能士を誕生させています。

「私は厳しく指導する方だと思います。自分の方針やり方は今後も変えるつもりはありません。仕事の厳しさは厳しく教えないといけないと考えています。品質と安全面には、特に口を酸っぱくして指導しています。結構、煙たがられているかもしれません(笑)。また、自分が手がける仕事に関して、最後まで責任を持ち、自分の目や手で確認し、自分の考えをもって取り組んでほしいですね。また、『企業は人なり』と言いますが、そこで働く人々が自らの能力や情熱を発揮させる風土が人材育成で重要だと思います。私たちベテランが後に続く人へ、より良い職場風土を残していきたいと考えています。そして、高校生の皆さんにも自分の知識や技能を試す手立ての一つにとして、技能検定にもチャレンジしてほしいと思っています。」

人が大きく育つ要素として、達成感の重要性も挙げました。

「この仕事は、機械を組立てることから始まり、客先で据付、試運転、そして実際に機械が製品を生み出し、その製品が厳しい検査や試験をパスするよう機械が動き、お客様に引き渡すことが出来れば、その達成感で自然と涙が出ます。お客様の喜ぶ顔を見た時にも、本当にこの仕事をしてきてよかったと感じます。学生の皆さんも、勉強でもスポーツでもいいので、高い目標を持って、それをクリアして達成感を味わうという経験をしてほしいですね。」

(写真上:ドイツでの業務風景、写真中:6,300t鍛造プレス、写真下:テスト前の様子 右下に人が見えます)
(写真中下は、新型プレス組立て状況です。世界最大の全自動鍛造プレスラインを製造する技術をもっています。)


若手技能者、若者へのメッセージ

ものづくりの大切さ、素晴らしさを子供・若者たちに伝えるにはどうすればいいと思いますか。

「世の中には、どんな立派な技術者や技能者がいて、何をつくりそれが世の中にどのように役立っているか知ってもらい、その技能・技術の必要性をアピールすることだと思います。例えば日本の自動車産業の技術は世界でもトップレベルです。それを支える当社の製品も世界でトップレベルと言えます。当社だけでなく、各社でモノづくりに携わる方々の結晶として高性能な自動車がこの世にあるのです。そういう仕組みや新しいものを産み出す喜びを子供・若者たちにもっと教えることが必要だと思います。」

学生さんや若手技術者にメッセージをお願いいたします。

「一つは、自分の手がけた物が製品として世の中に出た時、どこの部分に組み込まれてそれがどのように機能して、一台の機械や設備ラインとしての稼動状況や、何を生み出しているのかということを知って欲しいですね。私達でいえば最終的に納品した製品が世の中に役立っているのか、良い製品は顧客がどのぐらい喜んでくれるのかを知れば、例え自分のしている仕事が小さなことでも、ものづくりの大切さや重要性を理解していただけると思います。宇宙を飛んでいる衛星の中にこの新居浜工場で作った製品が使われて全世界へ情報発信されていますが、それは私達SHIグループの誇りでもあり、まさに夢のような出来事であり、希望が湧く話もあります。二つ目は、夢を追っかけて興味があることは、何事にも指をくわえず是非チャレンジしていただきたいと思います。上手くは言えませんが、何かを成し遂げた時の達成感や感激を一度でも体感し、また、それも早く体感する事が出来ればそれが次へのスッテプに繋がるので、一つの事でいいので是非頑張っていただき達成感なる物を味わって頂きたいと思います。」

最後に近藤さんの人生観について語っていただきました。

「一言で言えば「幸せ」でしょうか。ある安全講習会の中で、もっとも心に残った話があります。それは講師の方が『皆さんの一番の幸せと思うことは何ですか?』という質問をされ、我々受講者は、身近で楽しかったことや夢が叶ったときのことだと答えました。全員の答えを聞いた後、講師の方が『人生最大の幸せは健康と違うんかい?』と言われたときは、頭を金槌で叩かれたような思いがしたのでした。健康で病気もせずに、怪我もしないことこそが本当の幸せで、他の事は努力次第で手に入れられる贅沢ではないでしょうか。健康であることが大事だと言うことを気付けないのは、日本が本当に裕福すぎるからかも知れません。人間本来の幸せ考え、勉強やスポーツに励み、今後興味を持って打ち込めることを見つけ、皆さん方にも是非後悔の少ない素晴らしい人生を送っていただければと思います。」


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