技能継承が私の生き甲斐です
株式会社コスにじゅういちで主に教育を担当し、また高校生を対象とした電子機器組立ての講習会で講師を務めるなど、熱心に技能継承に取り組まれている愛媛マイスター田中喜与志さんにお話を伺いました。田中さんは学校を卒業後、大手電機メーカーで半導体製造、電気・電子関係の保守の業務に携わってこられました。
「昭和39年から、大手電機メーカーの訓練生として入社し、3年間の技能訓練生教育を終え、以来40年以上半導体集積回路製品の製造に関わってきました。半導体の前工程の業務やメーカーの設備保全講習を受講し、修理保全の作業を担当する等で経験を積んでいく中で、修理・保全業務にやりがいを感じていました。また、目の前にある半導体製造の機械設備がどんな仕組みで、どんな回路技術で動くのかに興味を持って、勉強を重ねてきました。」
どのようなことを大切にされて、技能・技術を磨いてこられましたか。
「子供の頃は海に潜って遊んだり、釣りをしたりするのが好きで、いま思い返せばそういった遊ぶ中でも何かにつけ色々なこと考えて何かをすることが多かったように思います。技能訓練生の時には、まだまだ電磁事象や電子回路等のことをよく理解していないまま製造現場に配属されていましたが、電子回路の図面を見たり、設備の故障を直すこととなると、自然と熱心に取り組んでいました。もともとどんな仕組みで動くのを考えたり、修理するのが好きだったんだと思います。」
技術・技能を向上させるために、普段から心掛けていることや、工夫されたことは何ですか。また、永年企業において、また高校生へ電子機器組立ての講師を務めていますが、その魅力について教えてください。
「機械設備を見て、何でそんなことができるのだろうか疑問や興味を持って、わからないことは調べていました。私は任された業務に対して、期待に応えることで、やりがいや喜びを感じ、更に技術・技能を向上させる努力をしてきました。自分の持つ能力を尽くしてものをつくりあげたり、何かできることがその人の技術・技能であり、それを評価され、理解されたときにこれまで半導体製造に関する業務でも、後進の育成でもやってきてよかったなと実感します。後進に指導する時は、丁寧にわかりやすく説明するように心掛けています。内容について面白さが共有できたときや、受講者が喜んでくれた瞬間が本当に良かったなと思う瞬間です。」
若手技能者や学生たちにものづくりの大切さ、技能の素晴らしさを伝えるためには、どうすれば良いと思いますか。
「子供の頃からものづくりを体験させることだと思います。高校生の講習会において、どの生徒さんもやってみると、とても面白いと言います。もしかしたら、現代の若者たちはものをつくる経験が少ないのかも知れませんね。ものづくりをやらせてみたり、見せてみたりする等の学習の機会を増やすことも良いかもしれません。ものづくりの楽しさを経験すれば、更にレベルアップしたいと考えたり、もっと興味を持って意欲的に取り組むようになったりして、次のステップへと繋がるので、何でもいいからものをつくりあげることを体験してほしいと思います。」
若手技能者や学生たちにメッセージをお願いいたします。
「自分でできることを増やし、周囲の期待に応えることです。仕事ができる人に仕事はついてきます。そのためにも興味のあることや、いま自分ができることを理解して、向上心を持って常に勉強しなくてはならないと思います。」
今後の目標について、お聞かせください。
「今後も、社内教育、技能継承に取り組み、高校生を対象とした講習会にも積極的に取り組み、ものづくりの楽しさや技能の素晴らしさを伝えていきます。また、これまで蓄積してきた知識や技能・技術を使って活躍できる場があれば、更に取り組んでいきたいです。」
(写真1:株式会社コスにじゅういち 西条事業所、写真2:社内講習会、写真3・4:高校での電子機器組立て講習会) |