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熟練技能者から若者達へ
 県内の熟練技能者とものづくり現場の紹介

熟練技能者の紹介  熟練技能者が活躍する現場とは
● 取材編 〜熟練技能者は熱く語る〜 ● ものづくり工場の紹介
● 紹介編 〜熟練技能者の紹介〜  

熟練技能者の紹介
  取材編 熟練技能者は熱く語る

藤本 大吉 氏 フジモト  ダイキチ
藤本 大吉 氏

調理職種


[Profile]
昭和16年11月30日生まれ

道後プリンスホテル 総料理長
住所:松山市道後姫塚100
電話:089-947-2000


昭和61年 第6回日本料理技能向上全国大会 県知事賞
平成6年  厚生大臣表彰 調理技術向上 功労賞
平成11年 NPO法人日本氷彫刻会総本部 特別功労賞
平成19年 愛媛マイスター認定     その他受賞歴多数


26歳の若さでホテルの料理長として勤務し、昭和49年からは道後プリンスホテルの総料理長として、卓越した調理技術を駆使し、現在も厨房の最高責任者として勤務し続けています。旬の素材を生かした日本伝統の味や彩りのバランスに配慮し、美味しさと美しさを追求した献立をつくるなどして新しい日本料理の方向性を提案し、永年後進の育成にも熱心に取り組むなど、日本料理の第一人者として活躍し、平成19年度愛媛マイスターとして認定されました。



季節の素材を生かしきる

道後プリンスホテルの総料理長藤本さんにお話を伺いました。日本料理の道を志すきっかけについて教えてください。

「学生の時、今後の進路で進学と就職の話がありましたが、ちょうどその頃に親戚で料理屋をしていた人がいまして、後継ぎとして料理を学ばないかとのお話をいただきました。昔から工作が好きで、ものづくりと言う点で興味がありましたので、この道に進むことを決意しました。」

修業時代については。

「見習いの頃は、現場で見るもの、聞くこと、習うこと全てが新鮮でした。また、料理長がつくった料理の残り物などがあれば、よく味見をしていまいした。料理長からは、特にものを大切にすることや、料理は味、色彩、盛り付けの大切さについて学びました。そして、商売とはお客様に満足していただきながら、儲けるものであると教えられました。いまもその教えを肝に銘じて守っております。」

修業時代に特に努力したことや、工夫したことはどのようなことでしょうか。

「調理方法や専門用語等わからないことがあれば、よく本屋に通い本を読んでいました。帰宅後は、野菜のむき物の練習や、本を読むなどして寝る時間がないこともよくありました。昔の料理の本というのは家庭料理の本ぐらいで、専門書はなく、しかも活字ばかりのものでしたが、自分が習っていることについて書かれているのを読むと、何もわからなかった自分にとって、何となく自信となっていました。」

修業時代に心に残ったことを教えてください。

「まだ若手の頃に、料理全てを任せされたことがあります。当時の私にとっては非常に大きな仕事でしたが、逆にもの凄いチャンスだと思いました。通常は会席をお出しするところでしたが、その時は大根等の剥き物をつかった大皿物にしてお出ししたところ、翌日料理長からそのお客様が大変喜ばれたと聞きました。この経験から努力することと、仕事で期待に応え信頼されることの大切さを実感しました。」

これまでどのようなことを大切にされて、技術を磨いてこられましたか。

「必要な資格等はかならず取得してきました。また、いわゆる『井の中の蛙』にならないよう、異業種の方々との出会いや交流を大切にしてきました。例えば、洋食や中華の調理師さんとも、30年以上のお付き合いさせていただいています。お互いの技術を知り、勉強しながら、競い合うことも必要ですね。」

また24歳頃に、まだ周りには誰もしていなかった氷彫刻の素晴らしさにもいち早く着目し、その技術を習得しました。

「氷彫刻のことを知った時は、氷をこのように美しく彫刻できるものなのだろううかと驚くと同時に、非常に興味を持ちまして、自分もやってみたいと思いました。昔は講習会やコンクール等が少なく、料理に関することなら何でも学びたいと思っていました。ただ、誰かに教えてもらった訳ではなく、最初は自己流でやっていました。その後、NPO法人氷彫刻会に参加し、それからは積極的に大会にも参加しました。氷彫刻があることで、より料理の美しさが際だち、また迫力も出ますので、そういった相乗効果があり、本当にお客様に喜んでいただいております。」

過去、26歳という若さでホテルの料理長も任されたことも、料理の技術が一段と伸びた大きなきっかけとなったそうです。

「26歳で料理長を任せていただきましたので、いままでとは違い誰も教えてくれないわけです。積極的に自分で習い、何か情報があれば自分の目で確かめて、実演するといった人一倍の努力が必要でした。でも、そのおかげで料理長として幅広く学ぶことができ、いまの私に繋がっている思います。」

(写真上:道後プリンスホテル(松山市道後姫塚)、写真中2枚:現場風景、写真下:昭和61年第6回日本料理技能向上全国大会 県知事賞受賞作品『伊予節めぐり』)


ものづくりと技能継承

この道50年以上、いまも普段から心掛けていることや、工夫されていることについてお聞かせください。

「日本料理は基本が大事で、伝統やしきたりを守ることも必要です。先人達が残した料理書や、全国で活躍されている料理長が執筆された専門書等を読んでおります。その中でも目新しいことがあれば、ものまねにならないように自分の献立に応用しています。若手に教えることも大切ですが、まずは自分が積極的に学ぶことも大事です。そして、会食やパーティーに参加し、異業種の方々と交流を深めています。」

この仕事のやりがいや、魅力を教えてください。

「料理は芸術です。その感性を養うには、お花や絵画、造形物など、美しいものを見るということが大事です。そして、私は器の中に空間を残して、風景をつくりあげるということを理想としています。また、一見無理な質や量の献立をやりくりしないといけないときもあり、それをやりこなしたときは本当に体がくたくたになってしまいます。しかし、お客様の『今日の料理は美味しかった。』と一言言っていただいたりすると、その疲れが解け、満足感を得られます。」

これまで永年後進の指導にも取り組んでこられています。その楽しさや難しさはどのようなことですか。

「ゼロからの見習いですから、一度に多くのことを学ぼうとすると不安になることもあることもあると思います。何よりも一つ一つの技を、反復して体に染みこませることが大切です。また、教えたことができるようになれば私も嬉しいですし、褒めてあげることも必要です。一つ一つのことを覚えできるようになれば、自信と喜びを感じられるでしょう。」

この日本料理の道を歩んでこられて、よかったと思うことはどのようなことでしょうか。

「常々、包丁を置くまでは勤め一筋にと考えておりましたので、定年を過ぎた現在も現場で包丁を持って立っていられることに感謝しています。体が動く間は修行であり、技術・技能はずっと磨かれ、一生身についています。また、おかげさまで多くの素晴らしい社長や仲間に巡り会えたことが本当に幸せです。」

(写真上中:第25回氷彫刻夏季展四国大会で大会実行委員長を務める藤本氏、写真下:藤本氏の氷彫刻作品)


若手技能者、若者へのメッセージ

この日本料理界で技を磨いている若手の方に、技を習得するときのポイントなどアドバイスをお願いいたします。

「楽な方を選ばず、厳しい道を選んでほしいです。より厳しい環境に身を置くことで、本当に技術は磨かれていくでしょう。また、大きなお店で量を学び、小さなお店で質を学び、反復することで技術は身につき、頭だけでなく体に染みつき覚えていきます。そして、日本の素晴らしい伝統文化や風習をよく理解し、それを料理に活かしてほしいですね。」

近年、若者がものづくりから離れているという現状がありますが、ものづくりに興味を持ってもらうためにはどうすればいいとお考えですか。

「例えば小学校から高校など学生を対象に、ものづくり体験教室を開催して、簡単なものから高度なものをつくってもらい実際に体験させたり、実際に熟練の技を見せたりしてあげることで、興味を持たせることができると思います。形のあるもの、ないものから新たにものをつくり出すということは、本当に楽しいことです。今後も積極的に愛媛マイスターとして、ものづくりの素晴らしさを伝えていきたいです。」

今後の夢、目標をお聞かせください。

「調理師を志望する人が少なかったり、調理師離れがある現在、問題点は幾つかあると思います。このことは調理師だけでは、どうにもならないものがあります。現状を経営者と共に考えていき、働く人が喜んでくれる職場、環境づくりを推進していきます。また、愛媛県調理師会会長としましても、職人の資質、技術の向上を図り、お客様から信頼される調理師の育成に努め、食育の知識を広く伝えていきます。」

この業界を目指している若手の方や、学生にメッセージをお願いいたします。

「仕事や技術は、一日で習得できるものではありません。リラックスし肩の力を抜いて、気長にやりましょう。継続は力なりで、努力と我慢が必要です。また、努力をしていれば、運が向こうからやってきます。また、調理技術を身につけることは、本当に良いことです。そして、周りの人や動物、物に感謝の気持ちを忘れないでいてほしいです。私自身、いま料理長としていられるのも、お客様や全てのスタッフ、職場を提供してくれる経営者さんがいるからです。人は常に一人では生きられません、大勢の方々の力を借りて生きているんです。」

(写真:取材時に氷彫刻を実演してくださいました。)


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