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熟練技能者から若者達へ
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曽我部 るみ 氏 ソガベ ルミ
曽我部 るみ 氏

和裁職種


[Profile]
昭和34年4月19日生まれ

自営 
住所:今治市朝倉上甲667番地
電話:0898-56-2385


昭和63年 職業訓練指導員免許取得 和裁科
平成元年 1級技能士資格取得 和裁職種
  〃     第9回技能グランプリ 和裁職種 第3位
平成2年  愛媛県技能士会長表彰 優秀技能者
平成9年  第17回技能グランプリ 和裁職種 第3位
平成11年 全国技能士会連合会長表彰 技能士会活動に係る功労者
平成15年 愛媛マイスター認定
平成16年 愛媛県知事表彰 優秀技能者


  和服専門学校を卒業し、その学校で教職に就いた後、呉服店、和服製作会社を経て、現在は自宅で和服を製作しています。平成2年第9回技能グランプリに出場以来通算8回、愛媛県和裁職種の代表として出場し、第9回、17回大会で第3位に入賞するなど、その技術力は業界第一人者です。また、和裁技能検定の受検者や技能グランプリに参加する選手に対して勉強会を開催、そして愛媛マイスターとして地域の方に技術指導を行うなど、後進の育成、業界の発展に大きく貢献しています。



和裁の世界に飛び込む

曽我部さんは、現在、今治市朝倉のご自宅で、着物本来の美しさと特性を引き出し、その出来栄えにこだわった和服を製作しています。この業界に入ったきっかけを教えてください。

「学生の時、工作や美術の授業がとても好きで、もともとものづくりに興味を持っていました。高校在学中にこの裁縫業界のことを知り、洋服か和服で悩んだんですが、和服の美しさに惹かれ、和服の世界に進みました。」

高校卒業後、和服専門学校に進学しました。当時の様子については。

「最初に感じたことは、なんて地味で大変なんだろうということです(笑)。本当にコツコツと技を磨いていくんだと実感しました。座布団の上でずっと座ることも大変で、針さえきちんと持つことができず、また運針でもなかなか真っ 直ぐ縫うことはできずに1本の運針に幾日もかかっていました。毎日、毎日、針を持ち、朝から晩まで着物を縫うことは、まだまだ高校を卒業したばかりの私には辛い日々でしたが、一度も辞めたいと思ったことはありません。」

日々の講義ではどのようなことを意識して、技を磨かれましたか。

「実技を中心に色彩学や染色技術等、和裁に関する様々なことを学ぶことができた充実した日々を過ごせました。実技では講師が実際にお手本を見せて、私たち生徒がそれを見て技を習得するために本当に繰り返し縫っていました。 初めて袷の着物を手渡された時、どうしていいのかわからないままに、一針一針縫い続け、仕上がったときの喜びは何とも言えませんでした。そして、初めて振り袖を縫わせてもらった日々を懐かしく思います。いまでもそうですが、毎日縫い続けることが大事ですね。」

全国で和裁を学んでいる学生を対象とした和裁全国コンクール(社団法人日本和裁士会主催)にも積極的に参加しました。この競技大会参加をきっかけにこの和裁の道で将来やっていけるのではないかと手応えを掴んだそうです。

「和裁全国コンクールは地区予選を通過した100名の若手が技を競う競技大会です。この大会で優勝することを目指して、本当にひたすら縫っていました。スピードや運針、綺麗に仕上げる技術力が一番身伸びた時期です。また、この大 会がいまの自分の原点だと感じていますし、競技大会を通じてこの和裁一筋でやっていこうと深く思いました。同じ道を志す人が集まる競技大会に参加することはとても良い刺激になりますし、技を磨く上でとても励みになります。」

この道32年、和裁一筋に技能を研鑽されてこられました。

「自分で様々な着物を縫えるようになるまでが大変です。毎日コツコツと技を磨き続ければ色んな和服を縫えるようになりますし、形にしていく楽しさや嬉しさを実感できるようになります。これまで壁や挫折だと感じたことはありません。常に一歩一歩前向きに進んできた32年間だと思います。」

(写真上中:自宅の現場風景(今治市)、写真下:曽我部さんが縫った振り袖)


ものづくりのこだわりと技能継承

第9回、17回の技能グランプリでは第3位に入賞し、全国にその技術レベルの高さを証明しました。

「和裁業界では一番大きな大会で、自分の実力を試したいと思い挑戦しました。若い方からご年配方まで幅広く出場選手がおり、特にご年配の方が現役で鮮やかに縫っているのを見ると、技術を身につけることの素晴らしさを実感しました。この競技で大切なことも、この業界に入った時に最初に学んだ運針です。この基本である運針の大切さを再認識しました。それまでは好きで始めた和裁で、仕事となるとなかなかそうもいかずに、納得する仕事ができないときもありましたが、競技参加後はやっと和裁をしてきてよかったなと実感しました。技能グランプリに参加して、自分の実力を知ることができましたし、技術的にも精神的にも鍛えられ、より成長することができて本当に良かったです。また、卒業した学校の先輩、同期、後輩、先生方にもお会いすることができたのも良い思い出です。」

どのようなことにこだわりを持って和服を製作されてこられましたか。

「例えば和服の値段の安い高いに関わらず私が手がけた和服は、どちらを見てもその出来栄えや和服本来の美しさが損なわれることのないよう、またその和服の良さや特性を引き出せるようにと心掛けてきました。着る人の気持ちになり、本当に丁寧に心を込めて縫うことが大切です。」

和服の良さを教えてください。

「何代にもわたって着ていただくことが一番の良さだと思います。糸をほどくと一枚の布になって、また違うサイズに縫い仕上げる等、その人が着るだけでなく、次の人も着られるように丁寧に扱って、ずっと引き継がれて着てもらうことができれば素敵ですね。」

技術力の向上、業界の研究、最先端の技術を追求し続けています。

「新しい和服や特殊な和服、流行、ニーズ等に対応できるように技術力を高めなければなりません。最近は、私が学生の頃にはなかった二部式の着物も人気で、よく製作しています。また、それだけではなく様々な和服が生み出されていくので、頭を柔らかくし、伝統技術のみに固執せず、柔軟に対応することが求められています。技術力の向上に大切なのは、学生時代と変わらず毎日心を込めて縫い続けることです。」

この仕事のやりがい、魅力を教えてください。

「お客様に喜んでいただくことに尽きます。以前、ある方がその娘さんに成人式で振り袖を着させるため、反物を縫ってほしいと依頼がありました。お母さんと娘さんの気持ちになって心を込めて縫い仕上げ、それをお渡ししたときに、そのお客様が非常に感激されて、とても喜んでくれたこともあります。そういった喜ぶ姿を見ることができれば、それまでの疲れとか辛さを忘れ、縫い上げて本当に良かったなと感じます。」

過去和服製作会社勤務時には、数多くの従業員に技術指導を行っていました。現在も近所の和服を製作している方に技術指導し、また愛媛マイスターとして地域の方に技術指導をするなど、技能継承にも熱心に取り組んでいます。

「教えることの楽しさは、教えたことを理解してわかっていただいて、段々とできるようになっていくことです。教えたことを一回で理解するのは難しいことですので、自分で何回も何回も地道に練習してしていく中で、ステップアップしながら理解をより深めることで、技術力が向上していきます。上手に縫えるようになるその姿を見ることが、本当に嬉しいですね。また、教えることで自分も成長します。」

(写真:平成15年 第22回技能グランプリ競技風景 通算8回技能グランプリに出場しています。)


若手技能者、若者へのメッセージ

この業界で活躍している若手の技能士や学生さんにメッセージをお願いします。

「好きなこと、興味のあることをまずはやってみることです。ただ、好きなことを仕事にすることは素晴らしいことですが、決して楽ではありませんし、お金をいただくということは本当に大変です。その中で、好きなことなら頑張って続けられますし、私がこれまで和裁を続けてこられたのも、好きだからだと思います。これまでの歩みは、本当に幸せなことだと思っています。」

今後の夢、目標をお聞かせください。

「この業界を志す人は、昔に比べたらかなり減っています。いまは特に華やかな業界が取り上げられることが多く、地味な側面を持つものづくりを、例えばテレビ、雑誌等ではなかなか取り上げられないこともあり、私たちものづくりに従事する人を知らない人が多いと思います。そこで愛媛マイスターの活動を通じて、ものづくりの楽しさを、子供から大人まで世間一般に広く知っていただけるように、これからも頑張ります。その活動を通じて、ものづくりの楽しさを知っていただいて、ものづくりの道に進もうと考える人が生まれれば本当に嬉しいです。また、和服そのものの魅力も少しでもお伝えしていきたいです。そして、私自身は死ぬ直前まで、和服を縫い続け、学び続けていきます。」


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