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熟練技能者から若者達へ
 県内の熟練技能者とものづくり現場の紹介

熟練技能者の紹介  熟練技能者が活躍する現場とは
● 取材編 〜熟練技能者は熱く語る〜 ● ものづくり工場の紹介
● 紹介編 〜熟練技能者の紹介〜  

熟練技能者の紹介
  取材編 熟練技能者は熱く語る

酒井 芳美 氏 サカイ ヨシミ
酒井 芳美 氏

陶磁器製造工


[Profile]
昭和6年7月4日生まれ

五松園窯
住所:伊予郡砥部町五本松146
電話:089-962-2163


祖父酒井如雲氏、松田哲山氏(現代の名工、哲山窯)に師事。ろくろ技術の確立や新たな釉薬を開発するなどし、独特の優れた作品を生み出す。


日本工芸会正会員
一水会陶芸部運営委員

昭和52年 砥部焼伝統工芸士認定(ろくろ成形)
平成2年 愛媛県知事表彰 優秀技能者
平成11年 砥部町無形文化財認定
平成12年 労働大臣表彰 現代の名工
平成17年 愛媛県無形文化財保持者認定
平成16年 黄綬褒章 受章
平成22年 旭日双光章 受章  その他受賞歴多数


 祖父酒井如雲氏(陶画師、彫師)が創業した五松園窯の後を継ぎ、早くからろくろ技術の研鑽に励み、新たな釉薬を開発するなど、砥部焼界を代表する陶芸家として永年活躍しています。また、若手砥部焼職人が中心となる陶和会を設立、愛媛陶芸協会会長を務めるなど、技術力の向上や技能の継承に尽力し、砥部焼を全国に普及させるなど、砥部焼界に大きく貢献しています。


ろくろの可能性を追求する

酒井さんは祖父如雲氏(陶画師、彫師)が創業した五松園窯で生まれ、幼い頃から砥部焼に触れて育ちました。高校生の時、如雲氏が病に倒れたことから、砥部焼の道に入ることを決意します。

「窯場が遊び場みたいなもので、祖父が仕事をしているのをまねして遊んでいました。祖父が病に倒れたため、高校生のころから修行に励み、後を継ぎました。」

砥部焼の需要が急速に伸び始めた昭和40年代は、型ものと呼ばれる焼き物が主流で、当時は型ものを中心に製造していましたが、ろくろでの砥部焼にもいち早く注目。手づくりならでは手の温もりや、技術力次第で無形の物から有形なものにするろくろの魅力に取り付かれました。

「20代後半からろくろを使って砥部焼づくりを始めました。当時は砥部にもなかなかろくろがありませんでしたので、型もの用の機械ろくろを改造して現在のろくろに近い物をつくり、業務の合間を見つけ、また夜遅くまでろくろの修行に励みました。」

若手職人で構成する陶和会を立ち上げ、講師として松田哲山氏を招き、多くの職人達がろくろ技術を磨きました。現在も続く陶和会では、技術力向上や交流の場として発展し続けています。

「松田哲山氏は当時から砥部焼界で最も優れた技術を持っていました。白潟君(現代の名工、八瑞窯)など陶和会の若手で切磋琢磨し、ろくろ技術を磨きました。自分の思い描いた砥部焼をつくれるようになるには、10年ぐらいは掛かりました。ろくろは基本ができないとつくりあげることは難しいのですが、ある程度できるようになれば、これほど楽しいことはありません。本当に楽しく砥部焼づくりに取り組んできました。また、当初は型ものというイメージが強く、ろくろでつくった砥部焼はなかなか購入していただくことが難しかったのですが、陶和会が中心となり松山市内の画廊で展示会を開催するなどの活動を続ける中で、段々と購入していただけるようになり、大幅に浸透していきました。また、砥部にも販売所が多くでき、観光客にも知れ渡るようになりました。」

自分の作品づくりを追求するため大きな窯元から独立する人や、新たに砥部焼の道に入る人もいて、現在では窯元が100を数えるようになり、全国有数の焼き物の産地として発展しています。

「最近は、いままでになかったような個性的で斬新なデザインや色の砥部焼が生まれています。伝統を大切にしつつ、新たな作風のものが生まれることは、今後の砥部焼にとって本当に良いことだと思います。また若手、ベテランが一緒に切磋琢磨することで、さらに砥部焼が発展していくと思います。」

(写真上:五松園窯、写真下:五松園窯工房)


ものづくりへのこだわりと技能継承

酒井さんは青、白、黒の三色しかない時代に、青白磁と白磁の中間色を発する独特の釉薬を開発しました。祖父如雲氏から受け継いだヘラを使い、半乾きの状態時に椿や菖蒲などを彫刻し、その釉薬が彫刻した部分に沈み込んで色が濃くなることにより強弱が表現され、彫り模様に深みを出した作品をつくり続けています。

「陶石の特徴と、釉薬をかみ合わせることに長年取り組んできました。花器の場合は、花を引き立たせるため、その釉薬によって草花模様を控えめに表現することで、花がより一層引き立ようになります。」

どのようなときにデザインや形のアイデアが生まれますか。

「個人的には着物の模様が好きで、特に控えめな模様を参考にしています。また、焼き物に限らず、絵画などを美術館でよく鑑賞しています。人がつくりあげた素晴らしい作品を自分なりに消化して、作品づくりに活かしています。」

陶芸家として必要とされることは何だと思いますか。

「幅広く色々な事に興味を持ち、技術的には鑑賞力や基本的なデッサンをする技術も必要です。そして、強い個性を持つことも重要です。」

今年から新たに開催される砥部焼従事者を対象とした「砥部焼ろくろ教室」では、酒井さんも講師として参加する予定で、技能継承にも熱心に取り組んでいます。

「白潟君が中心となってろくろに焦点を絞った『砥部焼ろくろ教室』を開講することとなり、工藤省治氏(現代の名工、春秋窯)とともに講師を務めさせていただく予定です。既にレベルの高いベテラン、若手を含めた砥部焼従事者を対象に、これまでのどの教室よりも高度な内容となると思います。皆が一緒になって技を見せ合うことで、さらなる技術力の向上、今後の作品づくりに参考になれば幸いです。」

砥部は他の焼き物の産地に比べ、家業を継ぐ傾向にあるそうです。

「陶芸家の後を継ぐということは親から一方的に言いきかせて、できることではありません。何よりも本人の気持ちや心構え、そして砥部焼に魅力を感じることが必要です。砥部がそういう傾向にあるのは、喜ばしいことです。」

酒井さんの息子さんやお孫さんも五松園窯で、砥部焼づくりに取り組んでいます。

「彼らがどこまでやれるか、どんな砥部焼を生み出していくかが本当に楽しみです。これからも若者がどんどん出てきて新しい砥部焼をつくっていってほしいです。そのためにも、技能継承の環境作りにも尽力していきます。」

(写真:祖父如雲氏も使っていたヘラ使い、巧に草花模様を描きます。)


若手技能者、若者へのメッセージ

若者のものづくり離れについて、ご意見をお願いします。

「私らはものが不足する時代に育ち、例えばその体験談を話したり、ものを大切にと言っても、それだけでは最近の若い子になかなか伝わりにくいでしょう。様々な面で恵まれた環境で育てば、もののありがたさを理解するのが難しいのが当然です。やはり、幼い頃からものづくりを体験することが大切だと思います。先日、親子を対象とした砥部焼手びねり体験教室を開催したところ、親子が一緒になって本当に楽しそうに砥部焼づくりに取り組んでいました。このような体験を通じて、ものがどのようにして生み出されるのか、そのためにどのような人がどういった努力や思いなどを持って、ものづくりに取り組んでいるのかということを、少しでも知っていただくことがものづくりの大切さや素晴らしさを理解し、実感する一つの方法だと思います。窯元のほとんどは見学可能ですし、体験教室などもありますので、砥部に来られた際には、是非気軽にご参加ください。」

若手技能者、若者へのメッセージをお願いします。

「若い頃は自分の将来に対して、不安になったり先が見えなくて迷ったりすることもあると思いますが、なるべく早く全力を注げるようなことを見つけてほしいと思います。そのためにも幅広く、色々なことに興味をもって、体験してほしいと思います。自分自身では気づきにくいかも知れませんが、それぞれ素晴らしい個性を持っています。その個性と興味に合うことに一生打ち込められれば、本当に素晴らしいことです。」

今後の目標についてお聞かせください。

「若者が砥部焼でやっていきたいと思うような産地でないと、発展していかないでしょう。また、ものづくりはつくるだけではなく、当然売れなければなりません。つくりあげたものをお客様に買っていただけることが最大の喜びです。それがものづくりを、より一層発展させる一つの大きな要素です。今後も行政や他業種の方々と連携をとりながら、ものづくりや技能継承の環境作りをして、砥部焼を発展させていきたいと考えています。」

(写真:酒井さんの代表的な青白磁と白磁の中間色に椿が描かれた作品)


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