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熟練技能者から若者達へ
 県内の熟練技能者とものづくり現場の紹介

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● 取材編 〜熟練技能者は熱く語る〜 ● ものづくり工場の紹介
● 紹介編 〜熟練技能者の紹介〜  

熟練技能者の紹介
  取材編 熟練技能者は熱く語る

河本 周雄 氏 カワモト チカオ
河本 周雄 氏

紳士服仕立職


[Profile]
昭和6年2月28日生まれ

河本洋服店
住所:松山市本町1丁目3-1
電話:089-921-6024

父が経営する河本洋服店で修行し、後を継ぐ。60年間の永きにわたり、紳士服仕立職一筋に研鑽し続けている。


昭和30年 職業訓練指導員免許取得(洋服科)
昭和39年 2級技能士資格取得(紳士服仕立職)
   〃   世界紳士服コンクール イギリス洋服組合連合会理事長賞受賞
昭和40年 1級技能士資格取得(紳士服仕立職)
平成5年  愛媛県技能士会長表彰 優秀技能者
平成19年 全技連マイスター認定 ※全技連マイスター制度は5年更新制


 父から紳士服仕立の技術・技能を受け継ぎ、創業84年の河本洋服店代表として現役で活躍しています。採寸が一番大切であるという考えのもと、着心地が良く、体に合った紳士服を仕立てることに優れた技術を持ち、お客様との絆を大切にした接客応対をするなど、お客様や同業者から高い評価を得ています。技能の継承にも熱心で、愛媛県洋服技能士会会長や技能検定委員を務めるなどして、多くの後進の育成に取り組み、また、小学生を対象としたものづくり教室の講師として、ものづくりの楽しさや素晴らしさを伝えています。


創業84年 父から技を受け継ぐ

大正15年、父正一さんが河本洋服店を創業、当時から松山城の西堀端に店を構え、太平洋戦争時には空襲など度重なる戦争被害に遭いながらも、幼い頃から仕事を手伝い、二人三脚でお店を経営してきました。

「一度店が全焼したこともあります。その時は、足踏み式ミシンだけは焼かれてはならないと、店が焼ける直前に父と必死になってお堀に沈めて、何とか難を逃れました。いまとなっては考えられませんが、本当に食べるものもなく、終戦前の学徒動員の際には、新居浜の軍事工場で働かなければならないため、家族と離れて生活し、学校で勉強することも難しく、辛い時期を過ごしました。また、下の兄弟が4人いましたので、終戦後は跡継ぎとして早く働いて両親と一緒になって家族を助けないかんとの一心で、一生懸命修行に取り組み、仕事を手伝っていました。」

どのようにして技を磨きましたか。

「本当に上手な父の技を真剣に観察して、日夜問わず練習しました。そして、昔はよく東京都などから当時の最先端の技術を持った職人さんが松山で講習会を開催することがあり、必ず参加して愛媛の職人達と一緒に切磋琢磨して技を磨き、また参考書等も数え切れないぐらい読み勉強しました。」

昭和39年に開催された世界紳士服コンクールで、イギリス洋服組合連合会理事長賞を受賞するなど、これまで多くの競技会で上位成績を修めました。

「競技会にも積極的に参加し、良い評価をいただいた時は自信になりました。この業界に限らず、競技会に参加することは自分の技術力を更に高めることができるなど、良いことだと思います。」

紳士服仕立職一筋60年以上、現役でご活躍されています。

「紳士服仕立職として歩んだあっという間の60年です。沢山のお客様に出会い、支えられたからこそ、ここまでやってこれたんだと思います。出会った全てのお客様に本当に感謝しています。」

(写真上:松山市本町−河本洋服店、写真下:昭和58年第25回全日本紳士服技術コンクール−日本毛織
工業協会会長賞受賞作品)


お客様との絆を大切に

お客様への思いを語っていただきました。

「一期一会と言う言葉を肝に銘じています。お客様にお会いしたその瞬間から、時間は瞬く間に過ぎ去っていき、その時間は二度と来ません。その一つ一つの瞬間を大切にし、常に感謝の気持ちを持ってお客様と接しております。また、長い方では30年以上お付き合いで、以前仕立てた紳士服をお直しさせていただいたり、新たにご注文していただいたりしています。」

 

この仕事の魅力を教えてください。

「普段は出会うことのない様々な業界の方と出会い、お話しさせていただくことも大きな魅力です。また、お客様と一緒に生地を選び、どのような形にするかを考え採寸し、より楽で軽く、さらに見る人を魅了できるように、お一人お一人の体に合った裁断をして、一針一針お客様のことを思いながら心を込めて裁縫することを心掛けています。そして、納品の際に『いいのができたましたね。』と言っていただければ、本当に嬉しいです。」

現在の紳士服等洋服を大量生産する技術に対しては、どのようにお考えですか。

「昔は大量生産でつくられたものというのは、安かろう悪かろうといった面があったかもしれません。しかし、最近は機械設備や技術が進歩し、流通等のシステムが確立され、流行に沿った品質の良いものを低価格でお客様に提供できることは、素晴らしいことだと思います。」

(写真上:平成19年度職業能力開発促進大会出展作品、写真下:平成21年度職業能力開発促進大会出展作品)


技能継承への取り組み

これまでお弟子さんを雇ったり、県洋服技能士会会長や技能検定委員を務めるなどして、後進の育成に尽力しています。

「製図と裁縫を重点的に指導しています。最近のお客様の好みの傾向は、体型にピッタリ合った比較的細めのものです。昔はゆったりとしていましたが、ここ数年でがらりと変わりました。お客様とのお話や本、雑誌などで情報を集め、流行や変化等を勉強しています。技を繰り返し練習することで、技術レベルの維持向上を図り、流行にも敏感でないといけません。」

ただ、紳士服仕立職を志す人が、かなり少なくなっているのが現状です。

「昔は、寝る時間や休日無しで仕事をこなさないといけないぐらいご注文いただいたり、松山の中心商店街にも沢山紳士服店があり、大勢の職人達がいましたが、大量生産の時代になり、我々紳士服仕立職の「人間にとって難しい時代になっています。当然、この職を志す人もめっきりは少なくなっています。現役の職人も50歳代以上の人間がほとんどを占めるなど高齢化し、またお店を継ぐ後継者もなかなかいません。時代の流れには逆らえませんが、寂しいことです。」

小学校からの依頼により開催しているものづくり教室では、小学生を対象としたミシンがけや裁縫を教えています。

「ミシンや針、はさみを使うときに、小学生達は目を輝かせて楽しそうに取り組み、手提げ袋などを作りあげると本当に嬉しそうにしています。私もそれを見るだけで心が生き生きします。この体験を通じて、ご両親やご友人と一緒に何か裁縫をしたりして、ものづくりに興味を持っていただければ幸せです。そして、身の回りのものや道具を大切にすることの大切さも教えています。」

(写真上中:ものづくり教室の様子、写真下:30年以上使っている裁断用はさみ−道具も大切にすることが大切と語ります。)


若手技能者、若者へのメッセージ

若手技能者や、学生さんへメッセージをお願いします。

「勉強、運動やスポーツ、ものをつくること、絵を描くこと、音楽を楽しむことなど、幅広く色んな事に興味をもって、何事にもチャレンジしてほしいと思います。そして、是非とも体を大切にしてください。」

今後の目標をお聞かせください。

 「今後のこの業界は、後継者や技能の継承等、非常に心配な面もありますが、そういった中で現代の名工高松さんのもとにお弟子さんがいることは本当に喜ばしいことだと思います。これからも愛媛県洋服技能士会や全技連マイスターの活動を通じて、若手の技能者や学生さんに少しでも技術やものづくりの楽しさ、素晴らしさをお伝えできればと考えています。」


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