愛媛県に植木を広めたい
横山さんは家業である農業を引き継ぎ、みかんや観葉植物など果樹農作物などの生産に従事した後、昭和40年有限会社横山緑化センターの前身の造園工事や植木のリース、植木の生産を手がける有限会社横山熱帯植物園を創業しました。(昭和45年に有限会社横山緑化センターに社名変更しました。)
「家が農業をしていましたので、農作物や植物などに触れて育ち、植物を育てることは本当に好きでした。植木を育てたり、美しい庭を造ることは、私にとって今も昔も夢中になって取り組める趣味みたいなものです。創業当時愛媛県は、比較的植木の生産が少なく、植木生産が盛んな福岡県や香川県の生産者のもとで苗の仕入れをするとともに、剪定を教えてもらったり、生産地を見て回ったりして、植木生産のノウハウを学んでいきました。そこで見た素晴らしい植木を、愛媛県に広めていくことを夢見ました。」
農業に従事していたときの経験が、植木の生産で役に立ったそうです。
「みかんを栽培していたときは、講習会等があれば必ず参加し、また果樹試験場で研修を受けて学びました。みかんを栽培するにも植木を生産する上でも、病害虫対策は非常に大切なことです。みかんの栽培で学んだ剪定の知識や、病害虫対策の方法など植木の生産に大きく活かすことができました。」
植木生産、造園工事の講習会にも積極的に参加し、また必要な各種資格を取得するなど、植木生産技術と造園工事技術を研鑽し続け、南楽園などの観光地や、公共施設、個人宅など、南予地域を中心に数多くの造園工事を手がけてこられました。現在では、15ヶ所の庭園樹及び緑化樹生産農場を持つ、全国でも有数の植木生産量を誇る企業へと成長しています。
「これまで植木生産、造園業の経営、運営するには色々なことがありましたが、苦労だと思ったことはありません。ただ、農業の知識はあったものの、植木生産、造園業での技術的な面で学ばなければならないことは多く、九州や愛媛県、香川県での講習会や研修にはよく参加をしましたし、本当に数多くの書籍を読んで勉強しました。その頃は、体が三つでもあればいいのになんて思いながら仕事や勉強をしたものです。」
特に日本庭園の作庭を得意としており、自然風景の中に、思想や家の繁栄を祈る日本の伝統的な庭園の作庭に、優れた感性と技能を有しています。
「お客様の庭に対する夢を実現するために造園設計、施工、管理等すべてにおいて、和風、洋風、自然風、四季の変化を楽しめる庭園を造ることを心がけてきました。また、日本はとても気候に恵まれていますので、もともと樹木や草花の種類も本当に豊富です。その中で、住宅の庭や庭園等に最適な樹木を厳選し、苗木から樹齢500年のウバメガシの庭園樹等、ニーズにあった植木生産をしています。」
このお仕事の最大の魅力はどういったところですか。
「どのものづくりの職人さんもそうでしょうが、つくりあげたものをお客様に喜んでいただくことです。また、造園職人の仕事というのは、誰が見ても素晴らしい、美しいなと感心していただける様な庭園をつくることだと考えています。」
(写真上:宇和島市高串−有限会社横山緑化センター高串営業所、中:樹齢250年のウバメガシ、下:四国最大規模の日本庭園−南楽園)
技術を身につけることの大切さ
横山さんは、技術を身につけることに熱心に取り組んでこられています。技術の向上のためにはどのようなことが大切でしょうか。
「社員の上に立つ人の技術に対する理解が大切ではないでしょうか。造園業界の親方さんの中には、人の仕事は見ないという考えの方もおりますが、やはりそうではではなく、ご自身はもちろん社員も全員で、積極的に講習会等に参加するべきだと考えております。我が社でも、社内での技術指導はもちろん、講習会への参加や資格取得のサポートをして必ず技能士資格等の取得をしてもらい、技術レベルの向上を図ってきました。お陰様で私のもとで育った職人は、お客様や同業者の方からも、評価していだだいております。また、これまで技術力向上のために講習会を開催し、県内から多くの同業者の方に参加してしただいておりますが、今後も講習会を開催して技術レベルの向上に貢献していきたいと考えています。」
永年にわたり宇和島高等技術専門校造園科の講師や技能検定委員を務めてこられ、多くの後進を育成してこられました。
「宇和島高等技術専門校にも非常に熱心な人が多く、皆さんよく学んでいただきました。途中で辞めた人が一人もいなかったことは、本当によかったなと思います。総勢約150名の訓練生を送り出すことができました。その方々とは今でも交流があり、忙しいときなどは手伝ってもらったり、研修旅行などにも一緒に行っています。そういった人との出会いも、私の大きな財産です。」
(写真上:植木の剪定をする横山さん、下:技能検定委員を務める横山さん(平成17年))
若手技能者、若者へのメッセージ
若手技能者、学生さんへのメッセージをお願いします。
「学生の皆さんには、ご自身の身近にあるお花や植物が枯れていたら、水をあげることが当たり前にできるような優しい心を持って育っていってほしいです。また、技能士の方には、愛媛県だけではなく県外に出て行って生産地を見て、生産者さんや職人さんなど色々な方のお話を聞き、そこで学んだことを実践してほしいです。また、講習会にも積極的に参加して技術力の向上に励んでください。そして、造園には美的感覚や色彩センスが非常に大切ですので、普段から美的感覚を養ってほしいです。例えばスーツを着るときには、周りの人におしゃれだなと思ってもらえるようネクタイやシャツ、靴の色や形を選べられるように。そして、お茶やお花の世界にも通じるとことがありますので、普段から礼儀作法も気をつけていれば、本当に素晴らしい職人になれると思います。」
今後も技術力の向上や後進の育成とともに、現在特に県内の街路樹をより美しくするための活動にも積極的に取り組んでいきたいと語っておられました。
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